「哲学随想」
Japanese Dream Realization



 「内なる指導理性と思索について」



 今日、思索したものは、今日の生命を生きているのである。今日の生命を生かされているのである。しかし、哲学に生きる者の生命は、真理を観じ、真理と一体となって真理を現わすので、今日という日を超越して、永遠無限なる日へとつながってゆく。永遠無限なる法身、永遠無限なる真理と一体となってゆくのである。

 宇宙の真理は、本来、永遠無限である。永遠無限の相をもって今日ある人生を観ずれば、その本質的生命が、本来、永遠無限の生命を宿していることが分かるのである。

 そのような永遠無限の生命であっても、人間としての肉体に宿ることは出来る。むしろ、人間という有限の存在であるからこそ、永遠無限なるものを希求するのである。思索するのである。

 しかし、思索している叡智自体は無常ではない。永遠普遍の真理を生み出し、永遠普遍の真理を観想せる人間は、叡智を内に宿しており、このような内なる叡智によって思索している限りにおいて、永遠の生命を生きているといえるのである。

 無常なる現象世界の中にあって、永遠無限の真理を統べるものこそ、叡智の本質である。無常な現象であっても、その内に永遠の法則を観ずる時には、その法則自体は永遠の真理であるといえる。

 故に、法則を認識することによって、無常界の中にあって、無常界を脱することが出来るのである。いかなるものにも法則があり、この三界は、法則で成り立っている。その法則を真理として探究する者は、いかなる世界に居ても、真理界に属しているといえるのである。

 欲界、色界、無色界の三界は、それぞれの境涯であるが、その中において、法則(真理)を常に認識する者は、常に法界(真理界)に居て、真理と共にあるといえるのである。形の上では欲界に居ても、欲というものを対象として思索をし、法則的真理を導き出していれば、そこに、欲界を超越した世界が展開するといえるのである。

 真理を思索し創造する者は、常に真理界、法界の内にあり、法楽の内にあるといえるのである。いかなるものであっても、思索の対象とならないものは本来ないのである。いかなる世界であっても、思索をしつづける限り、真理を無限に創造し、真理界を無限無数に創造してゆけるといえるのである。

 また、思索する前に、真理を学ぶということであっても、真理の世界を現象界に創造することになるのである。古今東西の哲人達の真理を学べば、現在にあって現在を超越してゆく。永遠無限の世界に楽しんでゆくことが出来るのである。

 さらに、自らの思索を練って、思索を深めてゆけば、思索すること自体が、現象界を超越することになるのである。思索することによって真理を育むこと自体が、真理界へと超入し、真理界から現象界を創造することにつながるのである。

 真理というものは、本来、真理界に実在する無限の叡智である。そして、現象界の根底にも常に実在する所の叡智である。故に、吾々は、現象界にあって、現象界の根底を思索し、人間自身という自分の現象自体の根底を思索することによって、無限の真理界へと飛翔してゆくことが出来るのである。

 自分自身という現象の根底には、実在があるのである。法則があるのである。真理があるのである。故に、現象即実在、現象即叡智である。これこそが、現象の根底において現象を現象たらしめているものなのである。

 現象の奥なる法則的生命と現象そのものは、本来、不二である。本質から現象は生まれるのである。法則から現象は生まれるのである。真理から現象は生まれるのである。そして、法則に則って現象は営まれるのである。

 では、自分自身の指導理性というものは、現象世界の自己とどういう関係にあるのであろうか。これは、現象世界の法則とは違う世界の法則的真理なのである。カントの云うように、現象世界の因果律とは違う世界の叡知的実在なのである。しかしながら、かかる叡智的実在は、現象的自己に語りかけ、働きかけるのである。それは、カントの云う所の定言的命法の主体であり、道徳的立法をする主体でもあるものである。

 故に、アウレリウスの云うとおり、吾々は常に吾々の内なる指導理性の声、導きを定言的命法として尊重しておかなければならない。

 確かに、現象世界の因果律も法則であり、真理であるが、現象は、やはり現象でもある。このような現象を超越する指導理性、叡智界というものはあるのであり、それこそが不滅の実在であるのである。故に、吾々は、常に内在する叡智に対して心を向けておく必要があるのである。

 このような内在する叡智、指導理性は、天来のものであり、永遠不変であり、或る時は、思索の主体そのものでもある。思索している主体は、永遠不滅の指導理性であるのである。




〔 光明祈念歌 〕
理性より
     永遠不滅
          精神の
奥なる法則
              思索するなり
(貴)




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