「哲学随想」
Japanese Dream Realization



 「あらゆる矛盾を統合し止揚発展しつづける内部体系について」



 様々な困難な状況が身に迫っているのを自覚しながらも、真理の世界に飛翔し、真理の世界に魂を遊ばせることで、あらゆる執着から離れてゆくことが出来るのであり、本来の自己を取り戻してゆくことが出来るのである。確かに、人間は、様々な限界状況に縛られている存在であるが、その限界の中で、無限なるものを獲得しようとすることこそが、哲学の営みでもあろう。

 真理というものによって、吾々は、様々な限界状況をも達観し、その中からも真理を導き出すことが出来る。あらゆる逆境を克服する智慧の力を、心の内奥より湧出させてゆくことが出来るのである。

 様々な哲人や賢者達が歴史の中で同じような境遇に合い、それを智慧でもって克服してきたのである。たとえ外面的には悲劇のように観えたとしても、その魂は活き活きとしており、不死身であり、むしろ、そのことによって、徳の輝きと智慧の輝きを放っているものなのである。

 人間は、時には孤独の中に置かれる時もある。しかし、古の哲人や賢者達と共にあり、さらには、自ら思索した真理と共にあるならば、その孤独は癒されるばかりか、むしろ、そこに智慧の泉が存在することが分かるであろう。ある程度孤独な時間を持ちうるということは、知的生産物を創造するためには必要不可欠なことであるのである。

 そのような智慧の泉から無限無数の清水が湧出されてゆく時、孤独は聖なる孤独となり、その意識は人類全体の意識とつながってゆくことが出来る。そして、智慧の光明を人類全体に向けて創造してゆくことが出来るのである。さすれば、常に人類全体との融合感を持って生きてゆくことが出来るのである。

 様々な古の哲人達の書と共にあるということは、様々な哲人達の最も哲人らしい本質的な部分と時間を共有することでもあろう。表面的な人間的な交わりよりも、そのような知的生産物によって交わる方が、古の哲人達と、より一層、本質的な友情を交流させているともいえるのである。

 そして、人間の無意識の領域には、古の哲人達の意識が住んでおり、表面意識の思索に応じて、古の哲人達の意識が流出してきて、無意識の内に、自らにとって、また人類にとって必要な思想哲学を創造することが出来るのである。自分自身の表面意識の思索によって流出し、照らされた無意識の哲人達の智慧は、一種独特の個性を持つようになってゆくのである。

 このように、無意識を積極的に働かせてゆくことによって、自分自身にしか創造出来ない唯一無二の無意識との邂逅をすることが出来る。このようにして流出してゆく無意識は、表面意識が気がついていなかった思索を育んでゆくこともあるが、こうして無意識から流れ出した思索を積極的に活用してゆこうとすることは、知的創造にとって有効なことであるのである。

 人間は、無意識の中に、古代よりの人類共通の智慧を蓄えているものであるのである。それらが、表面意識の古典の精読と思索によって、誘い水のように導き出されて、一つの思想の流れを形成してゆくのである。

 理念というものは、無意識の領域にある真理の働きであるともいえる。それは、自らの意識の内に宿っているものであって、無意識の世界の実在であるのである。表面意識に昇ってくる無意識とは、彼岸の世界から此岸の世界へと顕現してゆく理念の流出であり、イデアの流出であるのである。

 また、理念とは、それ自体が一つの体系を創造しつづけているものであり、あらゆる命題を創りながら、なおかつ、さらに違った命題を創り出し、さらなる命題を創造してゆく実在であるのである。

 確かに、一つの矛盾は葛藤を生むが、その矛盾が止揚された時には、統合された至福を生んでゆく。地上に生きていて、何も葛藤がないということは、或る意味で、意識の体系、自己の真理の体系が発展していないということでもある。故に、様々な個性の切り口から、自己の真理の体系をその都度見直し、さらに、その違いを止揚発展させてゆくことを願いつづけるべきである。

 人間の精神は、どのようなことがおころうとも、それを同化し、さらに、そこから価値を創造しつつ、矛盾を統合し、新体系を創り上げてゆく無限の力が宿されているのである。どのような環境も、一つの新体系、一思想、一哲学を築いてゆくための契機である。それは、新たに思考し、思索してゆくためのきっかけにすぎないのである。その意味では、地上の矛盾は、自己の哲学体系を築き拡げてゆくためのチャンスの連続でもあるといえるであろう。

 哲学的精神は、本来、限りなき剛さを有しているものである。それは、鍛えられ、磨かれれば磨かれる程に輝きを増す金剛石のような実在精神である。思想が創られてゆく過程というものは、一つ一つの矛盾が止揚統合され、一体系に収められてゆくことの顕れであるのである。

 吾々は、無意識の内に、人生と世界の様々な矛盾に相対峙し、それを止揚統合しようとして精神活動を展開しているものである。吾々が無意識の内に読書をし、経験をして、思索をしているようなことの中にも、無意識の統合しようとする一大精神が発露していることが多い。

 様々な矛盾に相対峙することによって、無限の可能性が己が精神世界に拓かれてゆくのである。自己の真理の体系が、それを契機にして、一つ一つ広がって、大きく成長してゆくのである。







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