理念情報

 「哲学的コラム」
Japanese Dream Realization



「ルソーの『一般意志』とカントの『永遠普遍の道徳法則』による立法について」



JDR総合研究所 代表
天川貴之




 ルソーが『社会契約論』で説く所の、理性による「一般意志」としての憲法の立法は、それは永遠普遍の真理の顕現であるから、各人の個別意志を集めた「全体意志」とは異なるものである。

 公益と共に私益を満たしてゆくこと、公法と共に私法を充足してゆくことこそ、法学の最大の課題である。

 カントはルソーの本は同時代に全て読んでいて、書斎にはルソーの肖像を掲げていたが、カントは、このルソーの『エミール』に影響を受けて、『実践理性批判』を綴るのである。

 このルソーに学んだカントは、ルソー的方法に範をとって、人間は、内なる実践理性によって「永遠普遍の道徳法則」を認識して立法し、それに則ることによって善を実現してゆくことを説くのである。それは、ルソーの『社会契約論』における「立法する一般意志」にも通ずる真理である。

 このカントが説く「永遠普遍の道徳法則」とは、森羅万象を貫く所の真理のことである。故に、法学においても、真理法学体系があるのであり、それが、理念法学、理念政治学、理念倫理学などとなって顕われてゆくのである。

 このように、「永遠普遍の真理」と言っても、法理的真理もあれば、道徳的真理もあるものであり、近現代の法学にあっては、「法と道徳の分離」は大切な論点であるが、「永遠普遍の道徳法則」、すなわち、道徳的真理と、法理学上の法学的真理は、本来、対応させて考えてゆくべきものでもある。

 それは、ルソーが、『社会契約論』の中で、「市民宗教」について述べているように、また、プラトンが、『国家』の中で、宗教的な真理として、エルの物語と福音書を語り継いだようにである。

 ルソーは、『社会契約論』の中で、人間は、理性の力によって立法して、「一般意志」を憲法として創って顕わしてゆくことが出来ると云う。

 このルソーが説く所の「一般意志」による憲法と国際法の創造は、後にカントが展開する所の法学、政治学における憲法と国際法の概念とも一致してゆくのである。





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