諸君よ、自己顕示欲について述べておきたいと思う。自分自身のもっている優れた属性を、多くの人々に認められたいという気持ちは、誰もがあることと思う。特に、自らの優秀性を自覚する方は、その傾向が強いであろう。私は、この自己顕示欲も、基本的にそれが人々を傷つけたり、悪くしたりするものでなければ、そして人々に愛を与え、向上させるものであるならば、肯定されてよい欲求であると思う。
大いなる夢を実現するということも、大いなる自己実現ということも、大きな範囲では自己顕示欲に入っているであろうから、この欲求を根本的に否定してしまえば、社会の発展がなくなってしまうからである。
しかし、その際にいくつか点検点がある。まず、「自己」という点であるが、他にも自己実現したい方がいるはずであるから、あまりにも他者との調和を無視したあり方は控え、発展の中にも調和の精神をもたねばならんであろう。
次に「顕示」という点であるが、自己実現があまりにもギラギラしすぎて、周囲の反発を買うということもあるであろうから、多少奥ゆかしさの徳や慎みの徳も加味された方が、よりスムーズな自己実現ができるであろう。
さらに、根本動機において、多くの人々への愛、世の中への愛という純粋な愛であるのか、それとも多くの人々の称賛が得たい、有名になりたいという不純な愛であるのかは、よくよく点検しなければならない。純粋なる与える愛故になした自己実現は、正当なる自己実現であるが、称賛欲の奪う愛故になした自己実現は、誤った自己顕示にすぎないといえよう。
また角度を少しかえれば、本当に世の中をよくするに足る、実力をもった方の自己実現は正当であるといえるが、実力が不充分なのにかかわらず、自己顕示だけに精を費やしているのは誤ったことであろう。その意味で、発揮するに足る正当な実力を、有しているか否かも点検した方がよいであろう。あらゆる面において、すべては善くなってゆくしかないのである。