理念情報

 「哲学的コラム」
Japanese Dream Realization



「小説を味わう美しい生活と幸福について」



JDR総合研究所 代表
天川貴之




 禅の悟りである「純粋経験即空である」ということは、さらに、小説というものを一つの意識現象として味わうということでもある。

 小説の中の一つ一つの事柄や人物の言動というものは、意識に映し出された所の作者の心である。そして、また、それを読む読者の感想というものも、意識現象である。

 小説家の創造力というものは、一つの小説のみならず、一つの人生そのものをも創るものである。一つの世界を一つの世界観をもって人物を配剤し、育むのである。

 小説の中の言葉の一つ一つはロゴスであり、また、その一行一行は詩歌でもある。このような創造的実在精神というものは確かにあるのである。

 その小説において描かれた所の作者の人生観、世界観というものは、その小説を通して味わうことの出来る、読者の意識現象の経験でもある。小説の一つ一つの中には、そこに永遠普遍の実在精神というものが実成しているのである。

 輪廻してゆくある魂の実在は、一つの人生物語の叙述によって、作品となって結実してゆくのである。作家が己が人生の一つ一つの経験の中で培った真理と真実が、小説の中に叙述されてゆくのである。

 確かに、生きた経験というものは、その人の唯一無二のものであり、そのことは、感受性というものも同じである。

 しかし、多くの人々に、共通項というものがあるのである。多くの人々は、心でつながっているのである。一つの心が動けば、もう一つの心が動くのである。

 大いなる夢の実現の一つは、小説を創ることであり。小説を味わうことであり、さらに、自らの人生そのものを一大小説にしてゆくことである。

 善く生きることは、美しく生きることであり、真なる美的生活とは、イデアの美を体現した生活である。真に美しさを観照しながら生きる時、人は真に幸福になるのである。





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