塾生諸君に述べておきたい。かのサッチャー元首相や、レーガン元大統領が、一定の実績のある名政治家であることは間違いないことであるが、その経済政策がすべて正しかったかというと、そうではない面も数多くあられるのであるということも着眼しておかなければならないのである。
例えば、小泉首相の実施されようとしている減税政策などは、サッチャー元首相や、レーガン元大統領が、一定の成功を収められた分野であり、そのことによって、消費や投資が伸びてゆくといえるが、一方において、行きすぎた金融政策は、過剰な金利の乱高下を招き、経済を不安定にし、行きすぎた競争原理の導入は、数多くの企業倒産を招き、失業率を上昇させ、行きすぎた福祉政策の制限は、これもまた消費を低迷させることになったといえるのである。
また、現在日本のように、実力以上に円高が進んでいるような状況においては、かつてのレーガン元大統領時のドル高の時のように、産業空洞化を招いてゆくことになるといえるのである。その意味において、現在の円高傾向も、本来の実力に合わせた百七十円や百八十円程が適しているといえるのであり、円安傾向をつくってゆくために内需拡大をしてゆくことも大切であるといえるのである。
この十年間において、恐慌に陥ることなく、一定のGDPの成長率を保ってきたのは、政府の財政政策と日本企業の底力と国際社会の協力にあったということをよくよく弁えて、日本経済の活性化を通して全世界の経済を安定化させてゆく道を模索しつづけてゆけば、あらゆる面において、すべては善くなってゆくしかないのである。