塾生諸君に述べておきたい。学問の前提になっていることを「問う」ということは、非常に大切なことである。既に定説になっていることを「問う」ということは、非常に大切なことである。
例えば、現在、医学においては、「魂」であるとか、「神々」であるとか、「天使」であるとか、こうした霊的存在を、ただ単に人間の脳の創り出した現象であると考えられているが、果たして、それが脳の創り出した幻想にすぎないかどうかは、本当には証明されていないのである。
例えば、様々な預言者の系譜が世界史には実在しており、その価値は明確に認識されているが、これらすべてが、人間の脳が創り出したものにすぎないと考えてゆくと、人類の大多数の宗教の尊厳そのものを根底から覆してゆくことになってしまうのである。
真なる科学的精神態度というものは、こうした既に常識と思われている前提を問いなおすということにあるともいえるのである。そうしたことの中から、新しい科学体系が生まれ、新しい医学体系が生まれてゆくといえるのである。
例えば、かの西洋医学と東洋医学とをつなぐユングであっても、同時代の医学仲間からは理解されなかったといえるが、精神分析の世界において、目に見えない深層心理の世界を、霊的な観点から、実に意義深く説きあかされたではないか。
故に、霊的な世界、神々の世界、天使の世界に、科学的探究心をもってゆくということは、人類千年の大計、国家百年の大計を考えるにあたっても、大切なことなのである。まず、無知の知の原点に立脚して、神秘的なるものを尊重しながら、科学的分析をなしてゆくことこそ、真なる科学者の天命であり、真なる哲学者の天命であり、真なる学問の天命であるといえるのである。
未知なる世界を真に解き明かし、実証しつづけてゆけば、あらゆる面において、すべては善くなってゆくしかないのである。