塾生諸君に述べておきたい。人間として最も大切なことは、「天職」を、一生涯貫いて成し遂げてゆくということである。「天職」というものは、本来、万人が、天与の「使命」として、心の奥の奥に宿しているものであって、「真実在」の「理念(イデア)」として有しているものなのである。故に、自分自身の心の内奥にこそ、真なる「神」が居られ、「神」から、「使命」が「天職」として授けられているともいえるのである。
その意味において、「自己」を虚しくしてゆけばゆく程に、逆説のようであるけれども、真実の「自己」に目覚め、真実の「天命」に目覚め、真実の「天職」に目覚めてゆくことが出来るといえるのである。
これが、真に「善く生きる」ことの「原点」にある真理であって、自己の心の内奥に「神」を信じ、自己の心の内奥に「天の摂理」を信じ、「神」と「天の摂理」に生かされているという自覚を充分に持ちえない方は、「自我我欲」を満足させるためだけに自らの一生を費やし、自らの「使命」の自己展開としての「自己実現」に目覚めることなく、「神」の「要請」からも、「天の摂理」の「要請」からも遠い生き方をし、ある時には、「神」の「要請」に逆行し、ある時は、「天の摂理」に逆行し、自らの「自由意志」を、「自我我欲」のままに濫用しつづけてしまうことも多いのである。
人間は、本来、「天」の要請に基づいて、「天」から「天命」を受けて、地上に生を授かるのであって、自らの「天命」に気が付かなければ、自らの出生の「初心」と「本懐」と「誓い」を忘却し、天上界からみれば、無駄な生を送ってしまうともいえるのである。
それ故に、あまり地上的な視点ばかりに執われずに、天上世界の視点をもって、自らの人生の「真義」を問い直し、自らの人生の「方向性」を問い直し、自らの人生の「天命」を問い直し、自らの人生の「天職」を問い直し、自らの人生の「使命」を問い直してゆかなければならないといえるのである。そして、地上世界を去った後にも後悔しない人生を、「善く生きる」ことを通して実践してゆかなければならないといえるのである。
真なる「天命」観をもって、自らの人生の「原点」を問い直し、「善く生きる」ことを実践しつづけてゆけば、あらゆる面において、すべては善くなってゆくしかないのである。