桜 |
: |
桜よ桜
教えておくれ
彼はどうして
私の方を
振り向いてはくれないの
私は何をすればよいの
私がいくらあなたを
慕っても
あなたは遠くを観つめているの
遠くの空を観つめているの
まるで別れの日を
予感しているかのようにね
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桜の精 |
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桜さんの言葉どおり
彼はあなたの方を
既に振り向いているの
そのことに気づいてね
あなたの祈りは
一体何なのでしょう
彼はこんなにも側近くに
居るんですよ
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月読 |
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桜のことは
遠くから観つめているだけでいい
彼女に気づかれないように
愛しつづけたい
彼女には気づかれないように
愛の言葉を贈りたい
あの月のように
彼女の人生を観つめていたい
無言の内に語りたい
君の全てを包んでいるよと
語りたい
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武 |
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私が彼女の側に居る
あの月読の視線をかわして
彼女と結ばれたい
けれど
私の気性を彼女は好まない
付き合ってはいるけれど
言葉がつづかない
私は確かに武道に
生きる人間
勝利とは自分に打ち克つこと
自分を押し込め
彼女への愛を
表現するだけ
無我になればなる程に
彼女に近づくであろう
けれど恋の花は失われる
若き血潮の恋の花
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桜 |
: |
一年中花は咲いていない
なのに私の心の中には
一年中花が咲いている
一体私は誰を愛しているのだろう
武は私に告白した
けれど武はどこか遠いの
彼の言葉は私には届かない
将来が観えるものならば
武の将来を観てみたい
けれど武の彼女ではいられない
そんな気がしていた
住む世界が少し違うの
私は武にはついてゆかないのだろう
どうして二人共遠いのだろう
月読も武も遠い所で
なつかしむ間柄なのだろうか
武とつき合いはじめてから
もう一年
だけど武とは結ばれないのだろう
私は月読を愛してしまった
けれど
武と別れることは考えられないの
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桜の精 |
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何を悩んでいるのですか
武とあなたとは
ソウルメイト
お互いに魅かれ合う
けれどお互いに反発し合う
月読とあなたとは
ツインソウル
お互いに似ている
けれどお互いに知りすぎて
距離をとる
結ばれにくい間柄
けれどだからこそ恋の花の咲く
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月の精 |
: |
今夜は地上は満月
天上も満月
欠くることのない恋を
地上に注ぐ時
夏が終わり
人々は月を見上げることが
多くなった
けれど地上の人々は
私のことを忘れて久しい
私が投げかける言の葉を
受けとる人々は少ない
一人一人に語りかけているのに
誰も気づかない
月読よ
あなたは地上においては
満ち欠ける
あなたの円相は
桜も知らない
あなたの理念を
桜は知らない
あなたの絶えざる微笑だけを
彼女は知っている
あなたは月であれ
夜に輝く
魂であれ
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月読 |
: |
彼女は気づかない
私の本心を
気づかれないように愛しているのに
彼女は私の言葉に執われる
側に居ることだけが愛ではないよ
遠くから君の幸せを願うことも
愛なのではないのかい
私には君の花が観える
花がない時だって花が観える
君は桜の精と語り合い
私は月の精と語り合う
君が私のことを
愛していることは知っている
けれど二人はすれ違ってしまうだろう
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武 |
: |
月読は夜に考える
私は朝に考える
夜ふと思うことも
あまり感情に流れていることが多い
けれど
桜は夜に恋をするようだ
彼女の心が私から
離れてゆくぐらいならば
私は恋など忘れたい
けれど
彼女を忘れることは
誰に勝つことよりも難しい
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川の精 |
: |
あなたの想いを
音楽にしてゆけば
彼女の心に届くはず
あなたの想いを
詩にしてゆけば
彼女の心に届くはず
武よ武
もっと文化の華を
咲かせてゆきなさい
彼女は花の精と
お話しするぐらいなのだから
もっと美しさに
訴えるのです
芸術に訴えるのです
あなたのありあまる程の恋心を
芸術に託しなさい
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武 |
: |
川の精よ
文化の花を創るのは
彼女の役割
私は彼女の中に
理念(イデア)を観た
花を観た
花を愛してしまったのだ
花の散りゆく姿は美しい
けれど
私の心をさわがせる
花の咲く頃は
未だ寒い
その頃が好きなのだ
川よあなたは
どうして私の心を
彼女に伝えて下さらないのか
どうして
沈黙ばかりしているのか
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